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第四話 約束の指輪

Penulis: marimo
last update Terakhir Diperbarui: 2025-11-23 09:17:40

交際が始まってから、二人は誰もが羨む恋人同士となった。

 柊 蓮と成瀬 玲。

 表の世界と夜の世界――決して交わるはずのなかった二つの光が、運命のいたずらのように重なり合った。

 それはまるで、静かな夜空にふたつの星が寄り添うような関係だった。

 お互いに惹かれ合いながらも、どこか危ういほどの熱を秘めて。

 出会って間もない頃から、蓮は玲を特別な存在として扱った。

 他のホステスと違い、彼女を同伴や接待の道具にするようなことは一度もなかった。彼にとって玲は、誰にも触れさせたくない“純粋”そのものだった。

 交際を正式に始めた翌週。

 蓮は、こぢんまりとしたフレンチレストランの個室で、ひとつの小箱を差し出した。 玲は驚きに息をのむ。

 中には、細い金のペアリングが二つ。

 どちらの内側にも、同じ文字が刻まれていた。

 ――“R & R forever love”。

 RとR、つまりRenとRei。二人の頭文字が永遠の愛を象徴していた。

 「蓮……これ、まさか……」

 玲の瞳が潤む。

 「約束の印だ。婚約じゃない。けど、俺の想いはそれと同じだ」

 「……嬉しい。こんなに嬉しいの、初めて」

 その夜、玲は震える手で蓮の指に指輪をはめ、そして蓮も、玲の薬指にそっと指輪を滑り込ませた。

 二人の間に、静かで確かな絆が生まれた瞬間だった。

 それからの日々、蓮は週に三度は必ず玲の勤める「クリスタルローズ」を訪れた。

 店内に入ると、他の客たちの視線が一斉に集まる。

 スーツに身を包んだ若き社長――柊 蓮が来店するたび、店の空気が変わった。

 玲が彼の隣に座ると、まるで空間ごと照らし出されるような光が生まれる。

 「クリスタルローズ」のホステスたちの間でも、二人の関係は有名だった。

 嫉妬の視線が向けられることもあったが、玲はどこか誇らしげに微笑んでいた。

 閉店後、蓮は必ず玲を車で送り届けた。

 深夜の東京の街を、静かに黒いベントレーが滑っていく。

 玲は助手席で小さく欠伸をし、蓮の肩に頭をもたせかけた。

 その瞬間の彼女の安らかな寝顔を見て、蓮は思う――

 「この人のためなら、俺は何だってできる」と。

 休日には二人で郊外へドライブに出かけた。

 湘南の海沿いを走り、葉山のカフェでコーヒーを飲む。

 時には箱根の温泉宿まで足を伸ばし、露天風呂から満天の星を眺めた。

 玲は海を見つめながら、指先で自分の指輪をなぞるのが癖だった。

 「これを見るたび、蓮の顔が浮かぶの」

 蓮は笑って答えた。

 「じゃあ、俺は外せないな。お前を思い出すために」

 二人の間に流れる時間は、穏やかで、永遠のように思えた。

 そして、玲はいつも蓮の隣に立っていた。

 黎明コーポレーション主催のパーティーや、財界人が集まる晩餐会にも、蓮は必ず玲を同伴した。

 シャンデリアが煌めく会場で、深紅のドレスをまとった玲の姿は圧倒的だった。

 誰もが彼女を羨望の眼差しで見つめ、そしてこう囁く――

 「あの美しい女性が、あの柊 蓮の恋人だそうだ」

 「夜のクラブで出会ったらしいけど、まるで映画のような話ね」

 だが、二人は噂など気にしなかった。

 玲は蓮の腕にそっと手を添え、蓮はまるでそれを守るように包み込んだ。

 互いにとって、他の視線などどうでもよかった。

 蓮は、そんな玲に贅沢を惜しまなかった。

 時には、ドレスやジュエリー、香水などをプレゼントした。

 ある日、彼が渡したのは、パリで仕立てられた一点物のダイヤモンドネックレス。

 「似合うと思って」

蓮は照れ隠しに背中に回り、ネックレスを玲の首にかけてやる。

「こんな高価なもの……」玲は感極まった顔で蓮を見上げる。

 「値段なんて関係ない。玲が身につけてくれるなら、それだけで価値がある」

 玲は照れくさそうに笑いながらも、胸元にその輝きをそっと当てた。

 その姿に、蓮は思わず息を呑んだ。

 そんな麗しい二人の関係は、やがて夜の街でも話題となり、噂は当然、蓮の父・柊晴臣の耳にも届いた。

 黎明コーポレーションの創業者であり、夜の業界でも顔が利く男――。

 彼もまた若い頃は銀座のクラブで豪快に遊び、数多の女性と浮名を流した人物だった。

 ある夜、古い知り合いのバーテンダーから晴臣のもとにこう報告が入った。

 「会長、坊ちゃん、今は“クリスタルローズ”の玲って子に夢中みたいですよ」

 「クリスタルローズの玲……聞いたことがあるな。だが、俺はその女を見たことがない」

 晴臣は煙草をくゆらせながら、意味深に笑った。

 「ほう……坊主もようやく女に本気になったか。だが、夜の女は怖いぞ」

 その呟きが、後に蓮と玲を巻き込む運命の序章となるのだが、その時、二人はまだ知る由もなかった。

 ――ある日の夕暮れ。

 蓮と玲は東京郊外の展望台にいた。

 眼下には街の灯りが星のように瞬き、遠くには薄紅色に染まる空が広がっている。

 玲は、静かに蓮の腕に頬を寄せた。

 「蓮、あのね」

 「なんだ?」

 「こんなに幸せでいいのかなって、時々怖くなるの」

 玲の声は震えていた。まるで、幸せの裏にある不安を隠すように。

 蓮はそっと彼女を抱き寄せた。

 「俺がお前を守る。どんなことがあっても、玲を一生幸せにする」

 その言葉は、仕事で培った威圧感とは違う、深い愛情に満ちていた。

 しかし、蓮の背負う世界は、決して白くはなかった。

 黎明コーポレーションには、反社会的勢力との繋がりや、裏取引の噂が絶えなかった。

 それはただの噂ではなく、実際に組織の影を抱えた企業だった。

 蓮自身も時に、父の命令で裏の交渉に顔を出すことがあった。

 血の匂いを感じるような世界。

 だが、玲の前では――彼はただの、恋に落ちた一人の男だった。

 彼女の笑顔を見るためなら、どんな闇も遠ざけようと思えた。

 玲もまた、蓮のすべてを受け入れていた。

 仕事のことを深く聞くことはなかったが、彼が時折見せる険しい表情や、真夜中の電話にも動じることのない態度に、夜の世界でよく見かける男たちと同じ匂いがすることを感じ取っていた。

 彼女の部屋には、いつも蓮のネクタイや香水の香りが残っていた。

 「蓮が帰ってくる場所が、私でありたいの」

 玲のその言葉に、蓮はどれだけ救われたことだろう。

 彼女の胸の中に頭を預けるたび、世界の雑音が消え、心が穏やかになった。

 それは、彼にとって“唯一の安らぎ”だった。

 ――だが、幸せの影には、いつも何かが潜んでいる。

 ふたりが知らぬ間に、黎明グループをめぐる新たな動きが静かに進行していた。

 夜の街の噂、父・晴臣の疑念、そして玲の過去に秘められた“ある秘密”。

 その全てが交わるとき、蓮の「守る」という誓いが試されることになる。

marimo

「約束の指輪」―― あなたにとって、指輪は 愛の証ですか? それとも、覚悟の印でしょうか。 感じたことを聞かせてください。

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  • 黎明の風と永遠の指輪ー夜の世界で出会った二人、危険で甘い約束ー   第百二十三話 海が祝福する再会

      「玲、お祝いにどこか海のきれいなところに行こうよ。」 蓮と再会した翌日、玲はいつものカフェで麻美と向かい合って座っていた。  けれどその「いつも」は、もう過去には戻らない。  蓮と再会したことで、玲の中でいくつもの時計が動き出していた。 麻美は、報告を聞いた瞬間、文字どおり跳びはねた。  玲の手を取り、ぴょんぴょんと弾むように喜んでくれた。 「やっとよ! やっと元に戻れたのよ玲!」  「もう、麻美……落ち着いて……」 蓮も麻美に報告したとき、同じように大喜びされたらしい。  “蓮もさ、あのとき、泣きそうな顔してたんだよ?”と麻美は誇らしげに言った。 玲はそんな友人の様子に苦笑しながら、カップを持ち上げた。  紅茶の香りがふわりと立ち上り、緊張した心を少しだけほどいてくれる。 「また行くの……? もう大地くんは誘えないわよ。」 その名前に、麻美は一瞬だけ目を伏せた。  玲が父と兄の部下であり、桐嶋コンツェルンの社員だった大地のことを話したとき、麻美は驚き、そして少しだけ切なそうに笑った。 「もう大地くんはいいんだってば。」  麻美は軽く言ってみせる。  「あの子、絶対に私なんかじゃなくて、玲を守るために来てただけだし。」 玲が何か言いかけたとき、麻美はわざと明るく話題を変えた。 「それより……ねぇ、マルタって国、知ってる?」  「……マルタ……?」  「地中海の真ん中。透き通る青い海と、白い街並み。観光客も少なくて、静かでいいところ。」 玲は、ふっと息を止めた。 (地中海……青い海……蓮と私を祝ってくれる場所……?) 胸の奥で何かがきらりと光った。  麻美は玲の瞳の変化を読み取って、少し微笑んだ。 「海がね、私たちを祝ってくれるのよ。」 しばらく沈黙があった。  その沈黙は、迷いと、希望と、少しの恐れが混じった静かな時間だった。 そして玲は、ゆっくりと頷いた。 「……行ってみたい。」 麻美の瞳がぱっと輝いた。 「決まりね!」 その瞬間、すべては動き出した。  翌日、柊 蓮は部下を呼び出した。 「一週間、休みを取る。」 部下は驚いた。  蓮が休みをとるなど、ほとんどなかったからだ。 「……休暇、ですか?」  「ああ。航空券を頼む。目的地は—マルタだ。」 部下が手を止める。 「……マ

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